みなさんこんにちは。
本日も、世界の気になるゲームニュースを見ていきたいと思います。
今回ご紹介するニュースはこちら。
アトラス、「真・女神転生」のMMOを復活させたファンを提訴へ。
真・女神転生は、アトラスから1992年に発売された、スーパーファミコン用のゲームで、東京を舞台に、悪魔やオカルトをテーマにした独特の世界観が人気を呼び、以降、様々な派生作品が発売されています。
あの、超人気シリーズ、ペルソナも、女神転生の派生作品です。
ゲームシステムにおいても革新的な点が多く、後に多くのゲームに影響を与えています。
特に、敵を仲間にして合成するという遊びの先駆けであり、このゲームシステムを取り入れている代表的な作品には、ポケモンや、ドラクエモンスターズ等があります。
2000年には、ポケモンをオマージュしたスピンオフ作品、デビチルこと、真・女神転生 デビルチルドレン、黒の書・赤の書が発売。アニメ化もされ、小学生を中心に、流行しました。みなさんの中にも、子供の頃に、デビチルを遊んだ、という方は多いのではないでしょうか。
話を戻しますと、今回の事件は、女神転生シリーズ初のオンラインゲームで、2016年にサービスを終了した、女神転生・IMAGINEで起きました。
事件の概要としては、海外のファンが、サービス終了後にゲームをコピーして、エミュレートサーバーを運営していたことに対して、アトラスが訴えを起こした、というもので、現在エミュレートサーバーは閉鎖しています。
本動画では、エミュレートサーバーとは何なのか、その問題点について触れつつ、今回の事件の背景にある、ゲーム業界が抱える課題についてお話したいと思いますので、最後までご視聴いただけますと幸いです。
それでは、早速みていきましょう。
エミュレートサーバーとは
エミュレーターという言葉は、ゲームをしているかたなら、耳にしたことがあるかもしれませんね。大抵は、チートや不正などの文脈で使われるため、エミュレーター=悪いもの、と認識されている方も多いのではないでしょうか。
でも実は、エミュレーターという技術自体は、不正なものではなくて、辞書の説明を借りると、「特定のハードウェアやOS向けに開発されたソフトウェアを、本来の仕様と異なる動作環境で、擬似的に実行させるためのソフトウェア」、と定義されています。
ちょっと分かり難いと思うので、例をあげると、Switchで、スーパーファミコンや、ニンテンドー64等の異なるハードのゲームを動作させるイメージです。
実際、任天堂のサブスクサービスで利用できる、ファミコンやスーファミ等の旧作は、エミュレーターによって提供されています。
移植やリメイクとは違うの?と疑問に思われるかもしれませんが、移植やリメイクは、ソフトの中身を書き換えて、動作や見た目を新しいハードに最適化したものであるのに対して、エミュレーターは、異なるハードでも動くようにしただけです。
では、エミュレートサーバーはというと、第三者により非公式につくられた海賊版で、特徴としては、獲得経験値やアイテムドロップ率等が、公式サービスよりも高く設定されていたり、課金アイテムが無料で入手、または公式より安く提供されている点があげられます。
これを聞いて、そんな便利なものがあるなら使ってみたい、と思った人がいるかもしれませんし、実際、2000年初期のPCゲームでは、エミュレートサーバーを利用している人は結構な数、存在していました。
エミュレートサーバーを利用する場合、改造されたゲームデータをサイトでダウンロードし、改造データの提供者が立てたサーバーにログインします。
ここでお気づきの方もいると思いますが、提供者に悪意がある場合、ログイン時にIDとパスワードが盗まれます。
これがエミュレートサーバーによる1つ目の問題です。
現在でも、偽物のサイトに誘導してログインさせて、IDとパスワードを盗む、フィッシング詐欺が横行していますが、当時はゲームを餌にして、これらが行われていました。
みなさんの中にも、同じIDとパスワードを色んなサービスで使いまわしている人はいるんじゃないでしょうか?
そういった人は要注意で、仮にフィッシング詐欺にかかっていなくても、いずれかのサービスで情報漏えいがあった際に、他の様々なサービスでも不正被害に遭うリスクが上がります。こういった流出情報は裏サイトで、様々な不正業者に高値で販売されるためです。
冷静に考えてみてください。エミュレートサーバーの運用には、手間とお金とリスクが伴うのに、無償で提供するでしょうか?提供者にメリットがあると考えるのが普通です。
実際、2000年代の後半には、オンラインゲームにおける不正アクセスの被害が急増しています。被害急増の背景には、ゲーム会社自体にハッキングがあり、情報が盗まれたことも理由としては大きいのですが、その中には、エミュレートサーバーで盗まれたログイン情報も含まれていたはずです。
なぜ、そう言い切れるかというと、私が当時、不正アクセス被害にあった方々の調査や補填業務を実際に行っていたからです。
そして、エミュレートサーバーによる2つ目の問題は、公式サービスの寿命を縮めてしまうことです。
エミュレートサーバーは公式よりもユーザーにとって有利な設定になっていたり、無料または低価格で遊べることは先にお話しましたが、こうなると公式ではなく、エミュレートサーバーで遊ぶユーザーも出てきます。
実際、リネージュ2をはじめ、いくつかのゲームでは、公式よりもエミュレートサーバーの方が接続者数が多いとの調査結果もあります。
そうなると、本来は公式サービスで使われるお金が使われなくなるわけなので、開発元は売上面でダメージを負います。それはつまり、中長期的にはサービス寿命を縮める事に繋がります。
日本では、エミュレートサーバーと公式の両方を併用する方が多かったため、ユーザー数が急激に減少することはなかったと記憶していますが、理想の装備をエミュレートサーバーで手に入れてプレイすることで満たされてしまい、公式で入手するためにお金を払わなくなる、といった影響はでていました。
今回の事件について思うこと
では、今回の女神転生IMAGINEのエミュレートサーバーはどうだったのかというと、少し毛色が異なってきます。
公式サービスの終了を受けて、悲しんだユーザーの受け皿として、海外ファンによって運用されてきたようです。
現在は訴訟を受けたことで、サーバーを停止しており、内容の確認が出来ないため、憶測も含んでしまいますが、エミュレートサーバーで荒稼ぎしていたようには見えませんし、そもそも、サービスが終了したタイトルなので、売上も出ないと思います。
もちろん、だから許されるということではないのですが、一概に悪とも言えない、複雑な感情を覚えました。
また、これはゲーム業界全体が抱えている課題であるとも考えています。
オンラインゲームは、いつか必ずサービスが終了しますし、サービスが終了すれば、ゲームにはアクセスできなくなります。
現実世界であれば、思い出の品は、保管しておいて、あとでそれを眺めて懐かしむこともできますが、ゲームデータは物理的に存在しないため、保存しておけるのは精々スクリーンショットくらいです。
これは、個人に発生する問題ですが、それ以外にも、ゲーム文化を保存して、資料として後世に残していくという観点からも問題だと思っています。
こういった課題に対してアメリカでは、著作権の見直しが進んでおり、サービスが終了したオンラインゲームを著作権から除外し、第三者が保守することが一部認められています。
現在は、博物館等の特定の施設内に限定されていますが、今後は施設の外からもサーバーへアクセスできるように拡大を進めるようです。
日本においても、ゲーム業界の歴史を保存する動きが近年みられはじめ、企画段階の制作資料のアーカイブ化と共有が進められています。
いかがだったでしょうか。
昨今では、リリースから半年ほどでサービスを閉じるアプリも多い中で、PCオンラインゲームは、10年を超えるようなサービスも珍しくありません。
今回の女神転生IMAGINEも、2007年から2016の9年間サービスされていたこともあり、終了を嘆くファンや、エミュレートサーバーで存続させようとする気持ちもすごく分かります。
事実関係が分からないので、なんとも言えませんが、悪意を持ってやったのでなければ、なるべく穏便に解決してくれることを祈ります。
今回は以上となります。最後までご視聴いただき、ありがとうございました。
当ブログでは、今後もゲームに関するニュースや雑学を発信していきますので、よろしくお願いします。